はじめに
製造業では、日常的に機械設備を扱う現場が多く、労働災害のリスクが常に存在します。中でも重大事故につながりやすいのが、「巻き込まれ」や「挟まれ」などの機械系災害です。

このような事故が発生すると、企業は法的責任や損害対応に迫られるだけでなく、労災保険制度における「費用徴収」の対象となることがあります。

この記事では、実際に起きた事例を紹介しながら、企業が取り組むべき安全対策やリスク管理の視点をご紹介します。

1.実際に発生した死亡事故の事例と費用徴収の制度

ある製造工場では、商品を圧縮梱包する工程で使用されていたベルトコンベヤーの下にビニール袋が落下しました。作業員がこれを拾おうと機械の下に入った際、コンベヤープーリーの回転部分に体が接触。安全カバーが設けられていなかったため、体が巻き込まれて死亡するという痛ましい事故が発生しました。

労災保険は原則として国が負担しますが、このケースでは以下に該当したとみなされ、労働基準監督署から企業に対して費用徴収が行われたようです。

① 法令に危害防止のための直接的かつ具体的な措置が規定されている場合に、事業主
が当該規定に明白に違反したため、事故を発生させたと認められるとき。
② 法令に危害防止のための直接的措置が規定されているが、その規定する措置が具体
性に欠けている場合に、事業主が監督行政庁より具体的措置について指示を受け、その
措置を講ずることを怠ったために事故を発生させたと認められるとき。
③ 法令に危害防止のための措置が規定されていないが、事故発生の危険が明白かつ急
迫であるため、事業主が監督行政庁より直接的かつ具体的な措置について指示を受け、
その措置を講ずることを怠ったために事故を発生させたと認められるとき。


2.製造業で発生しやすい労災リスクとは

製造現場において、特に注意すべき事故類型は以下のようなものです:

  • 機械への巻き込まれ・挟まれ
  • フォークリフトや搬送機器による接触事故
  • 高温・有害物質による障害
  • 工場内の転倒や落下

これらの事故の多くに共通しているのは、「設備の安全対策の不備」と「作業者への教育の不足」です。中でも、安全装置の設置や維持管理が不十分な場合、重大な結果につながりやすいといえます。

3.事故を防ぐために企業がとるべき対策

安全管理は、単に「労災を防ぐ」だけでなく、企業の社会的責任を果たす上でも非常に重要です。以下のような取組みが求められます:

  • 危険な可動部への安全カバー・囲いの設置
  • 非常停止装置の整備と定期点検
  • 危険箇所・立入禁止区域の明示とルール化
  • 新人・既存社員向けの継続的な安全教育
  • 異常時の対応手順の整備と訓練

また、事故発生時の企業負担リスクに対しては、事前の備えとして法的責任や損害対応に関する管理体制の整備もあわせて検討されるケースがあります。

4.まとめ:安全は「経営課題」

労災事故は企業にとって人的損失だけでなく、法的責任や社会的信用の低下といった重大な影響をもたらします。
特に機械設備が多い製造業では、「現場任せ」ではなく、経営層から全社的に安全対策を推進していくことが重要です。

安全管理に「これで十分」はありません。
現場の状況に即した点検・改善を繰り返すことで、事故を防ぎ、企業の持続的な成長にもつながります。

※免責事項
本記事は執筆時点の一般的な情報提供を目的としており、保険商品の勧誘を目的とするものではありません。具体的な状況や制度変更により内容が異なる場合があります。万が一誤りや不備があった場合でも、当社(川崎保険センター)は一切の責任を負いかねますので、最終的な判断や詳細は必ず各行政機関および専門家へご確認ください。

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