近年、健康意識や交通混雑の回避、感染症対策といった背景から「自転車通勤」を導入・容認する企業が増えています。
一方で、従業員が通勤中に第三者と接触事故を起こした場合などに、「企業として何か責任が生じるのでは?」といった懸念の声も少なくありません。

本記事では、自転車通勤を認めている企業における通退勤中の事故リスクと、組織としての備えについて、一般的な観点からご紹介します。

■ 通退勤中の事故は基本的に個人の責任

一般的に、通勤中の行動は従業員の私的行為とされており、事故によって第三者に損害を与えた場合の賠償責任は、本人に帰属します。
ただし、事故の状況や従業員の通勤方法、企業側の関与の有無などによっては、企業に問い合わせや批判が及ぶケースもあります。

■ 企業が関与を問われやすいケース

以下のような場合、企業が間接的に関係を問われることがあります:

① 自転車通勤を認めていたが、ルールや保険の整備が不十分だった場合
会社が自転車通勤を許可していた場合、その際の安全管理や制度設計の有無が注目されます。たとえば、事故を起こした従業員が賠償に備える手段を持っていなかった場合、「企業としての管理体制はどうだったのか」が話題になる可能性があります。

② 制服や社名入り作業着を着ていた場合
事故当時に従業員が制服を着用していた場合、外部から「業務中」と誤解されることがあり、企業名が報道やSNSで拡散されるなど、社会的な影響が懸念されます。

③ 会社敷地内や管理エリアで事故が起きた場合
会社敷地内や構内通路など、企業が一定の管理責任を持つ場所での事故については、施設管理の観点から企業の対応が問われる可能性もあります。

■ 補償に関する誤解と整理

「施設賠償責任保険」など、企業が備える損害賠償リスクへの保険制度もありますが、こうした補償はあくまで企業が管理する施設や業務中の事故に関するものであり、通勤中の私的な行動は通常その対象外とされています。

通勤中の事故リスクについて、企業側でどのような備えを講じるべきかは、実際の勤務形態や制度設計によって異なります。

■ 一般的に検討される備えの例
  • 自転車通勤の事前申請制度
  • 通勤誓約書の提出(安全運転や保険加入等を確認)
  • 制服・作業着での通勤に関する社内ガイドライン
  • 万一に備えて、企業の業務中事故に関連する賠償リスクに備えた制度の検討

 これらの制度設計は、従業員を守ると同時に、企業としての説明責任や対応リスクを軽減する観点からも重要です。

横浜市・川崎市の自転車条例について

■ 「自転車保険の加入」が義務付けられています

各市区町村によって自転車の利用に関する条例が定められており、企業が従業員に自転車通勤を認める際にも、地域の条例内容に留意する必要があります。

▶ 横浜市
「横浜市自転車の安全で適正な利用の促進に関する条例」により、2021年10月から、すべての自転車利用者に対し、自転車保険等への加入が義務付けられています。
企業が従業員に自転車通勤を認める場合も、従業員本人が保険に加入しているかの確認が望まれます。

 ▶ 川崎市
川崎市でも「自転車の安全で適正な利用の促進に関する条例」により、2022年4月から、自転車損害賠償保険等への加入が義務化されています。
通勤・通学を含むあらゆる目的での自転車利用者が対象となります。

■ まとめ

通勤中の事故は基本的に従業員個人の責任にとどまるものの、状況によっては企業の関与が社会的・管理的に問われることもあります。
とくに自転車通勤を認めている場合は、制度の明文化や社内ルールの整備などを進め、事故発生時の影響を最小限に抑える体制を構築しておくことが望まれます。

※免責事項
本記事は執筆時点の一般的な情報提供を目的としており、保険商品の勧誘を目的とするものではありません。具体的な状況や制度変更により内容が異なる場合があります。万が一誤りや不備があった場合でも、当社(川崎保険センター)は一切の責任を負いかねますので、最終的な判断や詳細は必ず各行政機関および専門家へご確認ください。

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