~IT事業者が見落としがちな“非サイバー”リスクへの備え~
IT企業といえばサイバーリスクへの対応が注目されがちですが、事業継続を脅かすリスクはそれだけに限りません。自然災害や人的ミス、外注先リスク、経営リスクなど、多角的な視点でリスクマネジメントを検討することが重要です。本記事では、IT企業における「サイバー以外の主要リスク」と、その対策の考え方を整理しました。
目次
- サイバー以外の主要リスクとは
- 特に影響の大きい5つのリスク事例
- 今すぐできる実践的な対策の考え方
- 「万が一」に備える補完的手段の一例
- 最後に:組織としての備えを見直すタイミング
1. サイバー以外の主要リスクとは
「リスク=サイバー攻撃」と考えがちですが、実際には以下のような要因が企業活動を脅かします。
- 自然災害:地震・水害などによるオフィスやデータセンターの被災
- 人的ミス・内部不正:クラウド設定ミスやメール誤送信など
- 外注先トラブル:委託先の倒産や業務停止による連鎖的影響
- ハードウェア故障:サーバー、UPS、ネットワーク機器の物理的障害
- 経営層不在リスク:キーパーソンの急病・事故による意思決定停滞
これらは、クラウド化・在宅勤務・外注活用が進むIT業界で、特に見落とされやすいリスクです。
2. 特に影響の大きい5つのリスク事例
- 自然災害による拠点被災
データセンターやオフィスが被災すると、復旧に時間を要し、サービス停止につながる可能性があります。 - 外注先の業務停止・倒産
開発や運用保守を委託している先がトラブルを起こすと、自社サービスにも影響が波及します。 - 物理機器の故障
サーバー障害や電源装置不具合、ネットワーク機器の劣化など、ハードウェア起因のトラブルが発生することがあります。 - 人的ミス・設定ミス
クラウド設定の誤りや、重要データの誤削除・誤送信など、内部のミスが重大なインシデントを引き起こすケースがあります。 - 経営層・主要メンバーの不在
代表者やCTOなどの急病・事故により、意思決定や開発が停滞し、プロジェクト全体に影響が出ることがあります。
3. 今すぐできる実践的な対策の考え方
- ドキュメント化と可視化
業務フロー、システム構成、担当者権限を整理し、誰が何を担うかを明確にします。 - バックアップ体制と複数化
主要業務やデータ、担当者を複数人で共有し、業務継続性を高める体制を整えます。 - 外注先管理の強化
契約書にBCP条項や責任範囲、定期レビューの仕組みを盛り込みます。 - ハードウェア更新スケジュール
サーバーやUPS、ネットワーク機器の寿命・保守期限を管理し、故障リスクを低減します。 - BCP(事業継続計画)の策定・訓練
インシデント発生時の初動フローや代替手段をあらかじめ定め、定期的に演習を実施します。
4. 「万が一」に備える補完的手段の一例
どれだけ予防策を講じても、リスクを完全に排除することは困難です。そこで、事前の対策を補完する手段として、さまざまな制度や支援策の活用を検討できます。
- 業務中断損害の補償制度
- 賠償リスクに対応する支援制度
- キーパーソン不在時の代替支援
- 労務トラブル・不祥事対応の外部窓口利用
これらの制度は内容や適用条件が多岐にわたるため、自社のリスク構造に応じて、必要性の高いものを選定・検討するとよいでしょう。
5. 最後に:組織としての備えを見直すタイミング
非サイバーリスクも含めた総合的なリスクマネジメントは、「起きてから対応」ではなく「起きる前の備え」が肝要です。
定期的に以下の問いを立てることで、見落としを防ぎ、体制強化につなげられます。
- 今の備えで十分か?
- 役割分担や連絡体制は機能しているか?
- 定期的な見直し・訓練が行われているか?
このようなチェックを社内でローテーションし、継続的に改善を図ることが、IT企業の事業持続力を高めます。
※本記事は一般的なリスク管理の考え方をご紹介するもので、特定の制度・サービスの利用を推奨するものではありません。実際の対策内容は各企業の状況に応じてご判断ください
※免責事項
本記事は執筆時点の一般的な情報提供を目的としており、具体的な状況や制度変更により内容が異なる場合があります。万が一誤りや不備があった場合でも、当社(川崎保険センター)は一切の責任を負いかねますので、最終的な判断や詳細は必ず各行政機関および専門家へご確認ください。