火災や風災で設備や建物が被災した場合、再取得費用を火災保険で備えている店舗は多いですが、復旧までの休業中の固定費(家賃・人件費等)をカバーしていないケースが少なくありません。ここでは休業補償の概要と、付帯しない場合に生じる実務上のリスク、代替的な備えについて整理します。
1. 休業補償(営業損失補償)とは
- 災害で営業できない期間に発生する「売上減少(逸失利益)」や、家賃・リース料・光熱費などの固定費を対象に補償する仕組みです。
- 補償の範囲や計算方法(粗利益基準か等)は保険商品によって違います。
2. 休業補償がない場合のリスク(キャッシュフロー面)
- 休業中も家賃や人件費は発生するため、収入が止まる期間が長引くと手元資金が急速に悪化します。
- 短い例:固定費70万円/月の店が2か月休むと、固定費だけで140万円の支出が必要になります(復旧費用や追加費用は別)。
- 最悪、復旧前に資金が尽きて事業継続が困難になるリスクがあります。
3. 休業補償を検討する際のポイント(確認項目)
- 免責期間(待機期間):補償が始まるまでの日数(例:72時間・7日等)。短いほど保険料は高くなる傾向。
- 補償期間(最大支払期間):補償が継続される最大の期間(例:3ヶ月、6ヶ月など)。
- 補償の対象費目:売上減少(粗利益)・家賃・従業員給与など主に固定費が対象
- 地震等の扱い:地震・噴火・津波などは別扱いとなる場合が多い。
- 損害算定のルールと必要書類:POSデータ、売上帳、給与台帳、賃貸契約書などの保管方法。
4. 付帯しない場合の現実的な備え(保険以外)
- 緊急資金の確保:目安として固定費×3ヶ月分を目標に貯める、または金融機関の事前相談を行う。
- 家主との事前合意:災害時の家賃支払い猶予などについて、事前に話をしておくと交渉がしやすくなります。
- 代替営業の検討:臨時出店やケータリング、デリバリーへの切替ルートを検討しておく。
- データ・記録の整備:POSや予約データをクラウドで保管しておくと、損害算定がスムーズになります。
- 仕入先のバックアップ:主要仕入先に障害が出たときの代替先を確保しておく。
5. 事故発生時の実務的チェック(最初にやること)
- 保険証券で「休業補償」の有無・免責期間・補償期間を確認。
- 被害の証拠を保全(写真、受注・出荷記録)。
- 売上・仕入・給与の直近データを保存しておく(損害算定用)。
- 保険会社への初期連絡は、保険証券の指示に従って速やかに行う。
まとめ(要点)
- 建物や設備の再取得が保険で賄えても、休業による固定費負担が事業継続に大きな影響を与えるケースが多いです。
- 休業補償は選択肢のひとつですが、免責・補償範囲・算定ルールを事前に確認することが重要です。
- 保険の有無にかかわらず、緊急資金の確保や代替営業ルートの準備など、実務的な備えを併せて進めることをおすすめします。
※免責事項
本記事は執筆時点の一般的な情報提供を目的としており、保険商品の勧誘を目的とするものではありません。具体的な状況や制度変更により内容が異なる場合があります。万が一誤りや不備があった場合でも、当社(川崎保険センター)は一切の責任を負いかねますので、最終的な判断や詳細は必ず各行政機関および専門家へご確認ください。
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