はじめに、近年、パワーハラスメントやセクシャルハラスメント、不当解雇など、いわゆる雇用慣行に関するトラブルが増加傾向にあります。
神奈川県内(川崎市・横浜市)でも、労働問題に関する相談件数は一定数発生しており、企業側としても無関係ではいられないテーマとなっています。
これらの問題は身体的な事故とは異なり、目に見えるケガがあるわけではありません。しかし、精神的苦痛に対する慰謝料請求や労働審判、訴訟へ発展した場合、企業経営に影響を及ぼす可能性があります。
今回は、雇用慣行賠償責任という観点から、企業が押さえておきたいリスクと対策について整理します。
1.雇用慣行に関する主なリスク
企業が直面し得る代表的なケースとして、次のようなものがあります。
- パワハラによる精神的苦痛の主張
- セクハラによる就業環境の悪化
- 不当解雇や解雇手続きの不備
- 降格・配置転換をめぐる紛争
- マタニティハラスメントや育児・介護関連トラブル
これらは身体障害を伴わないケースでも、
慰謝料請求や地位確認請求、未払賃金請求などに発展する可能性があります。
さらに、SNSなどによる情報拡散の影響で、企業イメージへの波及リスクも無視できません。
2.なぜ今、相談が増えているのか
雇用慣行リスクが顕在化しやすくなっている背景には、次のような要因があります。
- ハラスメント防止措置の義務化
- 働き方の多様化(テレワーク・副業等)
- 労働者の権利意識の高まり
- 情報共有・拡散のスピードの変化
「従来の慣習」や「口頭での指導」が、思わぬトラブルにつながるケースも見受けられます。
3.企業ができる基本的な対策
雇用慣行リスクは、事前の備えが重要です。
■ 就業規則・ハラスメント規程の整備
定義・相談手順・懲戒基準を明確化。
■ 相談体制の構築
社内窓口の設置や外部相談窓口の活用。
■ 管理職研修の実施
管理監督者の言動は企業責任に直結します。
■ 人事判断の記録化
評価・指導・処分の経緯を文書で残すことが、紛争予防につながります。
4.企業(事業主)側でも相談ができそうな主な窓口
雇用慣行や労務トラブルについて、企業側が相談できる公的窓口をまとめました。
初期対応の方向性確認や法令解釈の確認に活用できます。
■ 相談窓口一覧
| 窓口名 | 電話番号 | 受付時間 | 公式サイト |
|---|---|---|---|
| 神奈川労働局(総合労働相談コーナー) | 0570-011-610 | 平日 9:00~17:15 | https://jsite.mhlw.go.jp/kanagawa-roudoukyoku/home/riyousha_mokuteki_menu/jigyounushi.html |
| かながわ労働センター(川崎支所) | 044-833-3141 | 平日 8:30~17:15 | https://www.pref.kanagawa.jp/docs/jg5/cnt/f7615/index.html |
| 川崎市労働相談 | 044-200-2111(代表) | 予約制 | https://www.city.kawasaki.jp/280/page/0000055776.html |
| 横浜市労働相談 | 045-664-2651 | 平日 9:00~17:00 | |
| 労働条件相談ほっとライン | 0120-811-610 | 平日 9:00~17:00 |
:活用のポイント:
- 企業(使用者)からの相談であることを最初に伝える
- 相談前に「経緯・就業規則・記録」を整理しておく
- 窓口で方向性を確認し、必要に応じて専門家(社労士・弁護士)へ
※受付時間や窓口体制は変更される場合がありますので、必ず公式サイトで最新情報をご確認ください。
5.社会保険労務士への相談も有効
雇用慣行トラブルは、法令解釈だけでなく実務対応が重要になります。
企業側の主な専門相談先として、社会保険労務士(社労士)が挙げられます。
社労士に相談できる主な内容
- ハラスメント発生時の初期対応
- 解雇手続きの妥当性確認
- 就業規則の整備・改定
- 労働審判前の事前整理
- 再発防止策の構築
:神奈川県内の相談窓口:
神奈川県社会保険労務士会
公式サイト:https://www.sr-kanagawa.jp/
無料相談会が実施される場合もあります。詳細は公式サイトをご確認ください。
初期段階で専門家の助言を受けることで、紛争拡大の防止につながる可能性があります。
6.万が一に備えるという考え方
仮に雇用慣行をめぐる紛争が発生した場合、
- 弁護士費用
- 調査対応費用
- 和解金・損害賠償金
などの支出が生じる可能性があります。
こうしたリスクに備える仕組みの一つとして、
**雇用慣行賠償責任保険(EPL保険)**という選択肢があります。
保険で対応できるケースや、加入有無などは保険会社や事案ごとにはよりますが、近年は商品改定ば進み、主な雇用慣行に起因する損害賠償や訴訟費用等を補償対象とする制度として、導入される企業も増加しております。
財務的リスクや、対応窓口の負担を分散する一つの方法として検討の余地があります。
7.まとめ
近年は精神的損害に対する慰謝料請求や労働審判への対応が課題となるケースも見受けられます。こうした雇用慣行リスクに備える手段として、雇用慣行賠償責任に対応する保険制度も存在しますが、まずはリスクの内容を正しく理解し、適切な予防策を講じることが何よりも重要です。
- 規程整備と教育による予防
- 相談体制の整備
- 早期対応の仕組みづくり
- 必要に応じたリスク分散策
これらをバランスよく整えることが、企業の安定経営につながります。
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雇用慣行リスクに加え、企業が従業員のケガや事故に直面した場合の対応も重要です。
たとえば、👉 「アルバイトスタッフがケガをしたら?〜労災と使える制度の基礎知識」
では、アルバイトスタッフやパートタイム労働者が業務中や通勤途中でケガをした場合に、
労災保険がどのように適用されるのか、また企業の対応ポイントについてわかりやすく解説しています。雇用慣行賠償責任のような雇用リスクと合わせてご覧いただくことで、企業の総合的なリスク対策に役立てられます。
※免責事項
本記事は雇用慣行賠償責任および労務リスクに関する一般的な情報提供を目的としており、保険商品の勧誘を目的とするものではありません。具体的な法的判断や制度の詳細については、必ず専門家および関係機関へご確認ください。
記載内容に誤りや変更が生じた場合でも、当社は責任を負いかねますのでご了承ください。
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