就労継続支援B型事業所では、利用者への支援に加えて、軽作業、清掃、食品関係、農作業など、事業所ごとにさまざまな生産活動が行われています。
さらに、利用者の送迎や事業所外での活動などを行っている事業所もあります。
そのため、就労継続支援B型事業所のリスクを考える場合には、単に「障害福祉サービス」という業種だけを見るのではなく、実際にどこで、誰が、どのような活動を行っているのかを確認することが重要です。
この記事では、就労継続支援B型事業所で想定しておきたい事故や事業運営上のリスクについて解説します。
就労継続支援B型とは?
厚生労働省は、就労継続支援B型を、一般企業等で雇用されることが困難で、雇用契約に基づく就労も困難な方に対して、就労や生産活動の機会を提供する障害福祉サービスとしています。
就労継続支援A型とは異なり、B型は「非雇用型」です。
指定障害福祉サービスの運営基準でも、就労継続支援B型について、就労の機会を提供するとともに、生産活動その他の活動の機会を通じて、知識・能力向上のために必要な訓練等を行うことが定められています。
この「生産活動」があることが、B型事業所のリスクを考えるうえで一つのポイントになります。
事業所によって活動内容が大きく異なるためです。
1.利用者が作業中にケガをするリスク
まず考えておきたいのが、利用者が生産活動などを行っている際の事故です。
例えば、
・ハサミやカッターなどを使用していて手を切った
・荷物を運んでいる途中で転倒した
・調理中にやけどをした
・清掃作業中に転倒した
・工具や作業機器を使用していて負傷した
など、作業内容によってさまざまな事故が考えられます。
特に重要なのは、「就労継続支援B型」という名称だけでは実際の危険性を判断できないことです。
袋詰めなどの軽作業を中心とする事業所と、清掃、食品加工、農作業、木工作業などを行う事業所では、想定される事故が異なります。
したがって、
「どのような作業を行っているか」
「刃物・工具・機械などを使用するか」
「利用者の特性に応じた安全管理ができているか」
など、実際の活動内容から事故リスクを確認することが大切です。
2.利用者が第三者の物を壊したり、第三者にケガをさせたりするリスク
生産活動では、利用者自身がケガをする事故だけでなく、第三者に損害を与えてしまう可能性も考えられます。
例えば、
・作業中に他人の所有物を破損した
・施設外での活動中に作業先の設備を破損した
・作業中の物が第三者に当たってケガをさせた
といったケースです。
ただし、ここは注意が必要です。
事故が発生したことと、事業者に法律上の損害賠償責任が発生することは同じではありません。
実際の責任関係は、事故原因、当事者の状況、事業者による安全管理・監督状況など、個別の事情によって判断されます。
そのため、「事故=事業者が必ず賠償する」と考えるのではなく、事故を防止するための安全管理と、事故発生時の報告・記録・対応方法を事前に整理しておくことが重要です。
3.施設外で活動する場合は事業所内とは違うリスクも
就労継続支援B型では、活動が事業所内だけで完結するとは限りません。
事業内容によっては、
・清掃
・農作業
・除草作業
・商品の加工や梱包
・その他、事業所以外の場所で行う活動
なども考えられます。
外部の施設や敷地などで活動すれば、事業所内とは異なる環境で作業することになります。
例えば、作業先の設備・商品などを破損したり、移動中に事故が起きたりする可能性も考える必要があります。
したがって、リスク管理では、
「何をするか」だけでなく、「どこで行うか」まで把握することが重要です。
事業内容や活動場所を変更した場合には、それまでの安全管理体制や各種契約内容が現在の実態に合っているかを確認しておくことも大切です。
4.利用者を送迎している事業所では交通事故にも注意
利用者の送迎を行っている事業所では、自動車事故も重要なリスクです。
例えば、
・送迎中に他の自動車と衝突した
・自転車や歩行者と接触した
・利用者が乗車中に交通事故が発生した
・駐車場内で接触事故が発生した
などが考えられます。
複数の利用者が同じ車両に乗っている場合には、一度の交通事故で複数の方が負傷する可能性もあります。
車両そのものの安全管理だけでなく、
・誰が運転するのか
・送迎ルートはどうなっているか
・運転者の健康状態をどのように確認するか
・事故発生時の連絡体制をどうするか
など、送迎業務全体として安全管理を考えることが重要です。
5.利用者の事故と職員の労働災害は分けて考える
B型事業所のリスクを整理するときに注意したいポイントです。
厚生労働省は就労継続支援B型を「非雇用型」と位置付けています。
したがって、B型利用者の生産活動中の事故と、事業所に雇用されている職員の業務中の事故を同じものとして考えるべきではありません。
一方、職員については、
・利用者への支援中に負傷する
・荷物を運んでいて腰を痛める
・清掃や作業支援中に転倒する
・送迎業務中に交通事故に遭う
などの労働災害が発生する可能性があります。
利用者に対する安全対策と、職員に対する労働安全管理は、それぞれの立場や制度を踏まえて整理しておくことが重要です。
6.火災・地震・水害などで事業を継続できなくなるリスク
事故だけでなく、自然災害についても考えておく必要があります。
例えば、
・火災によって事業所が使用できなくなる
・地震によって設備や什器が損傷する
・豪雨や洪水によって建物が浸水する
・停電などによって事業を継続できなくなる
・災害によって職員が出勤できなくなる
などです。
障害福祉サービスは利用者やその家族の生活を支える重要なサービスです。
厚生労働省も、災害が発生した場合でも必要な障害福祉サービスを安定的・継続的に提供することが重要として、障害福祉サービス事業所向けの「自然災害発生時の業務継続ガイドライン」やBCP(業務継続計画)のひな形を公開しています。
そのため、建物や設備の被害だけではなく、
「被災した後、どのようにサービスを継続・再開するか」
という視点も必要です。
7.事業内容が変わったときはリスクも再確認する
開業時には軽作業だけだった事業所が、その後、
「食品を取り扱うようになった」
「施設外で清掃作業を始めた」
「送迎を始めた」
「新しい機械を導入した」
など、活動内容を変更することもあるでしょう。
事業内容が変われば、事故の可能性も変化します。
そのため、開業時に一度リスクを確認して終わりにするのではなく、事業内容や活動場所などが変わったときに再確認することが重要です。
就労継続支援B型事業所で確認しておきたい7つのポイント
ここまでを整理すると、B型事業所では少なくとも次のような項目を確認しておきたいところです。
1.利用者が生産活動中にケガをするリスク
2.利用者等が第三者に損害を与えるリスク
3.施設外で活動する場合のリスク
4.送迎中の交通事故
5.職員の労働災害
6.火災・地震・水害などの災害リスク
7.災害・事故発生後の事業継続
そして重要なのは、すべてのB型事業所に同じ対策が必要なわけではないということです。
実際の生産活動、利用者への支援内容、施設外活動、送迎、建物・設備など、それぞれの事業所の実態に合わせてリスクを確認する必要があります。
横浜・川崎で就労継続支援B型を運営されている事業者の方へ
株式会社川崎保険センターでは、横浜・川崎を中心に、介護・福祉事業者をはじめとする法人・事業者のリスク対策に関するご相談を承っています。
就労継続支援B型事業所では、同じ障害福祉サービスであっても、生産活動、施設外での活動、送迎の有無などによって想定されるリスクが異なります。
現在の事業内容と安全対策、加入している保険契約などが現在の事業実態と合っているか、一度整理して確認してみることもリスク管理の一つです。
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参考資料
・厚生労働省「障害福祉サービスの内容」
・厚生労働省「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準」
・厚生労働省「障害福祉サービス事業所等における自然災害発生時の業務継続ガイドライン等」
本記事をご覧いただく際の注意事項・免責事項
本記事は、就労継続支援B型事業所において一般的に想定される事故や事業運営上のリスクについて、事業者のリスク管理に役立つ一般的な情報を提供することを目的としています。
本記事は、特定の保険会社または保険商品への加入を推奨・勧誘することを目的としたものではありません。また、掲載している事故例は一般的な事例を想定したものであり、すべての就労継続支援B型事業所で同様の事故・責任が発生することを示すものではありません。
事故が発生した場合の法律上の損害賠償責任の有無や範囲は、事故原因、当事者の関係、契約関係、事業者の管理状況その他の個別事情によって異なります。
また、保険契約による補償の有無や範囲についても、保険会社、商品、契約内容、特約、保険期間、事故発生時の状況等によって異なります。本記事に掲載している事故・損害等が、特定の保険契約において補償対象となることを示すものではありません。
具体的な保険商品の補償内容については、各保険会社が提供する最新のパンフレット、重要事項説明書、約款、特約等をご確認ください。
法令・制度等に関する記載については、記事作成時点で確認できる公的機関の情報をもとにしています。法令改正、制度変更、行政上の取扱いの変更等により内容が変更される場合がありますので、最新の情報については厚生労働省その他の関係機関が公表する資料をご確認ください。
本記事の内容のみをもって、個別の事故に関する法的責任、保険金支払の可否その他の判断を行うことはできません。

